二輪のEVも業務用から普及へ - ホンダ、「EV-neo」のリース販売を12月から開始

二輪のEVも業務用から普及へ

ホンダ、「EV-neo」のリース販売を12月から開始

本田技研工業による「EV-neo」発表会。左から同社二輪事業本部事業企画室の伊勢野満氏、本田技術研究所 二輪R&Dセンターの本田幸一郎氏、同社二輪事業本部事業企画室の井沼俊之氏 図1:本田技研工業による「EV-neo」発表会。左から同社二輪事業本部事業企画室の伊勢野満氏、本田技術研究所 二輪R&Dセンターの本田幸一郎氏、同社二輪事業本部事業企画室の井沼俊之氏


ホンダの電動二輪車「EV-neo」試作車。東芝製リチウムイオン電池をステップ部分に搭載する 図2:ホンダの電動二輪車「EV-neo」試作車。東芝製リチウムイオン電池をステップ部分に搭載する


EV-neoに充電する様子。ステップ上においてあるのは100V電源用の普通充電器 図3:EV-neoに充電する様子。ステップ上においてあるのは100V電源用の普通充電器

 本田技研工業(ホンダ)は、電動二輪車「EV-neo」のリース販売を12月から行う予定を明らかにした(図1、2)。EV-neoは、昨年同社が第41回東京モーターショーで展示したコンセプトモデル「EVE-neo」を市販化に向けて開発を進めている製品である。ホンダは、電動車両として電気自動車(EV)の「EV-n」や電動二輪車のEVE-neoや「EV-cub」、電動三輪車のコンセプトモデル「Honda 3R-C Concept」などをこれまでに発表しており、それらの中からの製品化はEV-neoが初めてとなる。
 EV-neoは同社の二輪車としては初めてリチウムイオン電池を搭載する。リチウムイオン電池には、短時間での充電やサイクル特性などを考慮して東芝製の「SCiB」を採用した。
 EV-neoの当初の顧客としては、配達業務などを行う企業や個人事業主を想定している。EVの市販や発表が相次いだ昨年を「EV元年」とすれば、今年はEVが事業用はもとより個人にも広がる「EV普及元年」になりつつある。そんな中、過去に電動二輪車の事業化を一度断念したホンダのEV-neoが普及するか注目される。

EVとしての課題はクルマと同様、カギは電池などパワートレインの性能向上

 ホンダはジーエス・ユアサと合弁会社「ブルーエナジー」を設立、ハイブリッド車向けリチウムイオン電池の研究開発を進めている。その点から、今回発表されたEV-neoのリチウムイオン電池に東芝製の「SCiB」が採用された理由について知りたい向きもあるだろう。それについて、EV-neoの開発責任者である本田技術研究所第1商品開発室第2ブロック研究員の本田幸一郎氏は、電池の短時間充電やサイクル特性などの耐久性などの理由と共に、SCiBがEV-neoの開発タイミングに合致していたことを強調した。実際、筆者らが東芝のSCiB開発部門に昨年取材した際、SCiBが6000回以上のサイクル特性や20〜80%の広い充電率(SOC)、低温下でも安定した出力特性など電動車両に向いた特性を持つことを東芝は既に明らかにしていた。今回のEV-neoでは、200V単相電源で20分(約80%)、100V単相電源で4時間と以前の半分以下の充電時間を実現している(図3)。
 しかし、ガソリンに比べてエネルギー密度が低く、本格的な量産を前にまだコストが高いリチウムイオン電池のため、航続距離や価格面での課題が残っているのも4輪の自動車と同様である。現時点のEV-neo試作車では30km/h定地走行で30km以上を走行可能とするが、これは同じクラス(排気量50cc未満の第一種原付)のガソリン車両と比べるとまだ半分以下だ。このため使用する事業者も現在の二輪EVの長所と共に使用後にすぐ充電する必要があるなどの留意事項をよく理解して使うことが必要となるだろう。
 ホンダの技術者によればEV-neoでは回生ブレーキは走行フィーリングの調整が主であり、現時点では電池への回生充電を積極的に行っていないという話だった。したがって、回生ブレーキによるエネルギー効率をもっと高められればもう少し航続距離を伸ばせる可能性もありそうだ。また、リチウムイオン電池の更なる性能向上も期待される。

電動二輪の想定用途はピザや新聞の宅配、電動アシスト自転車と競合か

 一方、EV-neoに実際に試乗した限り、走行時の性能に関しては問題はほとんど無いようだ。発進時から滑らかで力強い加速感を実現しており、坂道も従来のスクーターと比べて遜色なく走行可能だ。静粛性やCO2を含め排気ガスがゼロであるといった抜群の環境性能を考えるとEV-neoを始めとした二輪EVが今後普及する方向にあることは間違いない。
 現状の走行性能や航続距離などから考えると、電動二輪の当面の用途としてピザや新聞の宅配などという近距離業務用というのは妥当な提案だと考えられる。初期コストがやや高くなるのが課題だが、長期間にわたって使うことを前提にすれば、ガソリン代と比較して一桁安い電気代やCSRの点などから十分な費用対効果が見込める場合も多いと思われる。今後ガソリンが再び高騰することになれば、そのメリットが一層高まるだろう。
 その半面、現在でもスクーターと競合している電動アシスト自転車とは今後も競合する可能性が高い。例えば、ヤマト運輸は地球温暖化防止に向けた取り組みの一環として「新スリーター」というリヤカー付き電動アシスト自転車を東京近郊の集配拠点を中心に多数導入している。企業などの営業や周回業務などでも環境面や駐車場が不要であるなど運用面のメリットから電動アシスト自転車の使用が拡大している。電動二輪車がこういった用途にも浸透するためには、電動アシスト自転車と比べたときの魅力やメリットを打ち出して明確な差異化を図る必要がありそうだ。

二輪や小型のEVにも期待される国や自治体の支援策

 ハイブリッド車や電気自動車など次世代エコカーに対しては現在「エコカー減税」や補助金などの優遇制度が適用されている。二輪や小型のEVも早期の普及を目指すためには、次世代エコカーの優遇制度に準じた支援策が国や自治体に期待される。例えば、従来車のスクーターから二輪EVに買い換える場合のスクラップインセンティブなどがあれば、高価な初期費用を軽減でき普及の弾みとなるうえ、CO2排出量の削減につながる。また、二輪車の市場縮小の原因にもなったとされる駐車違反取締りの問題でも、二輪EVの駐車場所を多く確保するなどの各施策が自治体などに望まれる。
 さらに、道路交通法や道路運送車両法などにおける車両の大きさとエンジンの排気量による車両区分もEVの登場と普及により時代遅れになりつつある。持続可能性と経済活性化を同時に追求するのであれば、EV普及策としてこの分野の規制緩和や法改正を国が積極的に行うべきである。それによって新しい市場セグメント創出や新規産業の育成が進むため、EV時代における日本の産業競争力が維持でき、雇用の増加も期待されるからだ。

(大場淳一=テクノアソシエーツ)

本記事に関連して当社刊行レポート「EVの普及と社会システムの変貌に潜む20の仮説」では、「EVは業務用車両から普及」および「車両の電動化は、電動自転車やバイクなど二輪から浸透」という仮説を業界有識者のコメントと共に解説した。この他にもEV/PHVの普及に向けた課題として、「蓄電池の低コスト化」、「充電インフラの整備」、「人々の意識の変化」の視点でさまざまな議論がある。詳細はテクノアソシエーツの調査分析レポート「EVの普及と社会システムの変貌に潜む20の仮説」を参照。


特集

動画レポート

人とくるまのテクノロジー展