注目はVW、GMの合弁相手?
いま2次電池の開発で自動車メーカー、電池メーカーが熾烈な開発競争を展開している。2次電池は、今後のクルマの基本性能を決める最も重要な部品である。例えば電気自動車の場合、2次電池のエネルギー密度がクルマの航続距離を決め、そのコストがクルマ全体の価格を大きく左右する。2次電池を制する者が次世代のクルマ市場を制するといっても過言ではない。
こうした中、自動車メーカーと電池メ−カーの提携が活発化している。自動車メーカーと電池メーカーの提携関係を分類すると、大きく三つに分けられる。第一が単に電池を供給する関係、第二が電池の共同開発を行う提携関係、そして第三が共同出資で電池の生産会社を設立する合弁関係である。自動車メーカーと電池メーカーの関係で注目すべきは合弁関係だ。自動車メーカーにとって電池はクルマの性能を決める中核部品である。自動車メーカーがその部品を外部からの供給にゆだね続けるとは考えにくい。自動車メーカーは、電池メーカーとの合弁会社を設立し、電池技術を傘下に治めて電池の技術開発・生産をコントロールしていくものと考えられる。トヨタ自動車がいち早くパナソニックと合弁会社を設立したことが、その方向性を示している。
ハイブリッド車の開発・製品化で先行したトヨタは、車載用の2次電池の重要性をいち早く認識し、2次電池を開発・販売していたパナソニック(当時松下電器産業)と提携した。1996年12月には合弁会社「パナソニックEVエナジー(PEVE)」を設立している。このほか、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業が電池メーカーと合弁会社を設立している。日産はNEC、NECトーキンと合弁で2007年4月に「オートモーティブエナジーサプライ(AESC)」を設立した。ホンダは、鉛蓄電池で国内トップ、世界でもトップクラスのGSユアサを提携相手に選び、2009年4月に合弁会社の「ブルーエナジー」を設立した。三菱自動車も、GSユアサと三菱商事の合弁で「リチウムエナジージャパン」を設立している。
こうした日本メーカーの動きを追って欧米の自動車メーカーも動き出した。ヨーロッパ最大の自動車メーカーである独フォルクスワーゲンは、2006年1月にHEV用ニッケル水素電池システムの開発で三洋電機と提携した(図1)。2008年5月には、リチウムイオン電池システムの共同開発でも三洋電機と合意している。さらに2009年2月には、HEV用の中核部品であるモータ、インバータ、電池を供給できる東芝と、EVの開発で提携した。2009年5月には、中国の電池メーカーBYDと、リチウムイオン電池を使用したEVやHEVの開発で提携すると発表している。
独ダイムラーも、2008年2月、自動車部品大手の独コンチネンタルと共同開発したリチウムイオン電池を搭載したHEVを2009年に市場投入すると発表している。また、2008年12月にコングロマリットのエボニック・インダストリーズの子会社である電池メーカーリテックに出資している。それを機に、ダイムラーとエボニックはリチウムイオン電池のセルの研究・開発や生産を共同で推進するとしている。このほかダイムラーは、米Johnson Controlsと仏Saftが2006年、車載用リチウムイオン電池の合弁会社として米国に設立したJohnson Controls-Saft Advanced Power Solutions(JCS)からもリチウムイオン電池の供給を受ける。
一方米国では、破綻によって米政府の資金が投入されたGMが、韓国LG Chem傘下の米Compact Power社や、米国のベンチャー企業A123 Systems、コンチネンタルなどとリチウムイオン電池の共同開発を進めている(図2)。その一方で、GMは日立製作所のグループ会社日立ビークルエナジーからリチウムイオン電池の供給を受け、2010年から年間10万台以上のHEVの量産を計画している。米フォードも2009年2月に、2012 年に発売予定のPHEV の電池開発で、電池メーカーのJohnson Controls-Saft 社と協力すると発表した。米クライスラーもすでに、2010年に発売を予定しているEVとPHEVのリチウムイオン電池の供給元として、A123Systemsを戦略的パートナーに選定したと発表している。
こうした動きの中で、今後その動向が最も注目されるのがフォルクスワーゲンとGMである(図3)。両社とも自動車の販売台数が多く、しかも多数の電池メーカーからリチウムイオン電池の供給を受ける。フォルクスワーゲンは、2008年ベースでトヨタ(897万台)、GM(836万台)に次ぐ世界第3位の自動車販売台数(627万台)を持つ。仮に同社でHEV化が一気に進めば、電池メーカーにとってはトヨタ、ホンダに次ぐ大きな市場となる可能性が高い。現在、フォルクスワーゲンは三洋電機、東芝、BYDからリチウムイオン電池の供給を受けることになっている。仮に今後フォルクスワーゲンが合弁相手を選ぶ場合、どの電池メーカーを選ぶのか、それによってHEV市場における電池メーカーの勢力図も大きく変わる可能性がある。
一方GMは一度破綻し、不採算事業や医療保険などの問題を整理して身軽になった。新生GMの自動車販売台数は半減すると言われているものの、それでも5位程度(400万台程度)のポジションを占めることになる。現在、GMにリチウムイオン電池を供給するとみられるのが、日立ビークルエナジー、コンチネンタル、LG Chemなどである。フォルクスワーゲン同様に、どの電池メーカーと合弁会社を作るのか、その動向が注目される。
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