北芝電機取締役社長
吉田民憲氏
北芝電機取締役社長 吉田民憲氏に
自動車電子化と車載用モータの関係や
可変バルブ機構用モータの開発について聞く
「可変バルブ機構は、動力性能の向上に加えて燃費向上に大きく貢献する技術。今後3年間で市場は十数倍に拡大する」。こう語るのは、今年4月より可変バルブ機構用モータの量産を開始した北芝電機の取締役社長の吉田民憲氏である。可変バルブ機構は、従来スロットルバルブで調整していたエンジンへの吸入空気量を、エンジン上部の吸気バルブのリフト量を変化させることにより調整する機構である。エンジンの吸入空気量をエンジン直前の吸気バルブで直接制御するため、動力性能ならびに燃費を向上させることができる。今回北芝電機が開発した可変バルブ機構用モータは、今年より発売の量産車に採用されている。吉田氏に、可変バルブ機構用モータの開発経緯、特長、市場環境および車載用モータ技術などについて聞いた。(聞き手 白石泰基=テクノアソシエーツ)
可変バルブ機構とは、エンジン吸気バルブのリフト量を変化させることによりエンジンへの吸入空気量を調整する機構です。通常のエンジンはエンジンへの吸入空気量を調整するためにスロットルバルブの開閉を行いますが、可変バルブ機構はさらにこれをエンジン吸気バルブのリフト量を変化させることにより行います。エンジン燃焼室上部にある吸気バルブを直接変化させるため、吸気抵抗の減少や吸入空気量制御のレスポンス向上につながり、その結果動力性能および燃費を向上させることができます。今回当社のモータが採用された可変バルブ機構は、バルブリフト量の調整をマイコンとモータを使用し電子制御します。これにより、バルブリフト量の連続的な調整が可能になり、運転状態に応じてエンジンに最適な吸入空気量を得ることができます。
可変バルブ機構用モータはエンジンに直接取り付けられます。そのため、熱や振動など高い環境性能が求められます。耐熱性は200度が、耐振動性では30G以上が求められます。さらに、運転状態に応じて素早くバルブリフト量を調整できるための応答性も重要です。粉塵や水などがモータ内部に浸入しないように高い機密防水性も必要です。そして、このような使用環境で長期の使用に耐えられる耐久性が求められます。
高い環境性能と耐久性を実現するためにシャフト径を太くしていますし、フレームの中には鉄芯がぎっしり詰まっています。フレームはプレス品を使用しています。また、ブラケットもアルミダイキャストとなっています。ただし、要求される仕様の厳しさを考慮すると、これでも相当の小型・軽量化を実現しています。このサイズで、100W以上の出力を実現しています。
ECUとのすり合わせは、Tier1メーカーとの協業になります。例えば応答性については、Tier1メーカーからはモータへの入力値などについて要望があります。当社からは、モータに必要な性能を出すための条件をフィードバックしながら開発を進めていきます。
可変バルブ機構は、動力性能の向上に加えて燃費向上に大きく貢献する技術なので、今後大きな成長が期待できます。これまで数年の開発期間を経て、今年から量産を開始しました。初年度は数万台の生産から始めますが、今後3年間で十数倍に急拡大するだろうと期待しています。
静音化については、エアコン用ブロアモータは車室に近いところに取り付けられるため、モータやファンの騒音が車内の快適性に直接影響します。当社のファンモータの静粛性は、大手の自動車メーカーから高い評価を得ています。ある調査機関が行ったブロアモータの騒音ベンチマーキング調査では、調査対象となった九つの製品のなかで、当社のモータが他に比べ一番静かであるというデータが出ています。また、昨年から当社のブロアモータが採用された外国車は、サイレント“ステルス”エアコン搭載と紹介されています。
モータには、シャフトとベアリング、ブラシとコミュテータなど摺動する部分が存在します。接触部分の加工精度を上げるとともに、バラツキを少なくすることが最大のノウハウです。表面は鏡面のように仕上げなければなりませんし、シャフトには高い真円度が求められます。当社の製造ラインは、自社開発による自動製造設備を使用し当社のコア技術を結集したものです。その結果、高い加工精度を実現しました。
当社は、米国Big3が中心となって制定した自動車向け品質マネジメントシステムの国際規格であるQS9000を2002年には取得しています。QS9000のISO/TS16949への統合にともない2005年にISO/TS16949を取得しました。海外市場に参入するためには、ISO/TS16949は必須です。当社の製品は、米国車、欧州車にも広く採用されており、2006年からはインド車へ納入を開始しました。
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