EV普及の鍵は、充電インフラに - インフラの充実がもたらす効果

テクノトランスファーinかわさき2009
<新エネルギーフォーラム>

2009/07/23

EV普及の鍵は、充電インフラに
インフラの充実がもたらす効果

CO2排出量の少ないEV 図1:CO2排出量の少ないEV

 「EVの普及には、充電インフラの整備が大きな役割を果たす。」こう語るのは、東京電力でEV導入を推進する同社技術開発研究所電動推進グループのグループマネージャー姉川尚史氏である。同氏は、「テクノトランスファーinかわさき2009」(かながわサイエンスパーク、2009年7月8日〜9日)で「電気自動車のための充電インフラ」と題した講演を行った。EVはCO2の排出量が少なく、次世代自動車として期待されているが、価格が高く航続距離が短いなど普及に向けた課題が残る。そのような現状に対して姉川氏は、自動車単体で解決を目指すには限界があり、充電インフラ整備と合わせた取り組みが必要であるという。(白石泰基=テクノアソシエーツ)

東京電力の試験車両 図2:東京電力の試験車両

 EVは、ガソリンを燃料とする自動車に比べ、CO2の排出量が少ない。走行時のCO2の排出量はゼロ、燃料の製造過程を含めても、CO2排出量はガソリン自動車が約190gに対して、EVは約50gである。この差は、都市走行ではさらに広がる。ガソリン自動車は平均車速が低い状態では効率が低下する。混雑時に平均車速5kmで走行したとき、ガソリン自動車のCO2排出量は約250 g/kmに増加する(図1)。

 東京電力は同社の業務車両にEVの導入を目指し、2006年から富士重工と2007年からさらに三菱自動車と共同で車両評価や実験データの蓄積などを進めてきた。試験車両の性能は、乗員2〜4名で航続距離は80〜120kmである。充電時間は、AC100Vを使用した充電では、フル充電まで8〜14時間かかるが、急速充電器を使用することにより15分の充電で約60km走行が可能である(図2、図3)。東京電力は、今後、一日の走行距離が80km以下の車両が90%以上を占める首都圏などで、同社の保有する軽自動車と小型自動車をEVに置き換えていく。

試験車両のスペック 図3:試験車両のスペック

急速充電インフラがEVの電池性能を補う

 EVの普及を広く進めていく上で障害となるのは、車両価格の高さと、走行距離の短さからくる利便性の問題である。姉川氏は、今後のEV普及の鍵として急速充電器の整備の重要性をあげる。充実した急速充電器のインフラが整備されると、ドライバーは経路上で電池容量を補充することにより、EVの航続距離を超えて行動範囲を広げることができ、自動車メーカーは高価なリチウムイオン電池の搭載量を減らし、EVの価格を抑えることができるからだ。

急速充電器の増設効果のイメージ 図4:急速充電器の増設効果のイメージ

 東京電力などが行った実証実験では、要所に急速充電器を配置することにより、EVの航続距離の短さからくるドライバーの不安が解消され、EVの利用範囲が大きく向上することが明らかになった。同社の横浜市のある事務所にEVを導入したケースでは、同事務所の管轄はおおよそ8km×15kmの範囲にあり、同事務所が航続距離80〜120kmのEVを業務車両として使用することに格別の支障はないように思われた。しかし、実際に走行記録を調べると、EVの行動範囲は事務所周辺から大きく外に出ることはなかった。そこで、姉川氏らは営業地域のほぼ中心となる地点に急速充電器を設置した。その結果、EVの行動範囲は営業地域内の全域に広がった(図4)。急速充電器の設置の効果は、同時にEVの電池残量の変化にも表れた。急速充電器の設置前は、事務所に戻ってきたEVの電池残量は50〜80%と容量の半分以上を残したまま帰社していた。これが急速充電器の設置した後は、電池残量は10〜50%未満になり、ドライバーが使いこなす電池容量の範囲が広がった。

 急速充電器は、高岳製作所、ハセテックからすでに販売されている(図5⇒ハセテックHP)。市販価格は350万円、設置工事にははおおよそ150万円かかる。これまでのところ急速充電器は、東京電力の首都圏の施設内に約20箇所、イオンレイクタウンや新丸ビルなどの商業施設、首都高速道路のパーキングエリア、横浜市内のガソリンスタンドなど約20箇所に設置されている。姉川氏は、今後自治体や民間の事業者などによって、さらに急速充電器の設置が進むことを期待する一方で、すべてのEVの充電インフラに急速充電器を整備することは、コスト効率の点で無理があると指摘する。街中の時間貸し駐車場やオフィスビルの地下駐車場などでは、既存のコンセントを利用した充電インフラを整えることで、EVの利便性の向上につながるとする。既存のコンセントを提供してEVに充電をする場合、電気代は1時間で20円程度である。住宅での充電インフラについては、戸建では対応が容易であるが、集合住宅などで使用されている機械式駐車場では課題が残る。姉川氏はこれについても関係者らと意見交換を進めているという。

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